JAL再生のフィロソフィー

感動経営 | Emotional Management

JALはいかにして倒産し、いかにして蘇ったか

今から11年前の2010年1月19日、日本航空(JAL)が会社更生法の適用を申請しました。2兆3,000億円という戦後最大の負債で事実上の倒産というニュースは日本中を駆け巡りました。

日本政府と再生支援協議会は、その再建のために、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏に白羽の矢を立てます。

すでに稀代の名経営者として名を馳せていた稲盛氏でしたが、航空業界に精通しているわけでもなく、当時は経営の現場から退いていたこともあって、当初は、固辞し続けたそうです。

しかし、何度も要請されている内に、義侠心が芽生え、周囲の反対を押し切って引き受けることになります。周囲の声には「いかに稲盛さんでも今回ばかりは…失敗して晩節を汚さないでほしい…」というものも少なくはなかったようです。

このとき、稲盛氏は無報酬であることを条件に会長に就任することを引き受けます。
そして、稲盛氏のところには、海外からの有名なコンサル会社などから、再建支援のオファーが数多く寄せられ、破綻の要因分析から再建までの道筋など具体的な提案もあったそうです。

しかし、JALの現場やそこで働く人の様子を見て、稲盛さんには破綻の要因が見えてきます。

叱り続ける日々

ある時、経営状況を確認するべく、財務書類を求めたところ、稲盛氏のところには3か月も4か月も前の月次決算書類ばかりが届く、不思議に思った稲盛氏がその理由を求めると、そこにいた幹部は…

「当社には世界中に支店があって毎日1000機飛んでいる。各支店や空港の数字を集めて、本社の経理がそれをまとめるのだから時間がかかるのは当然です」と。

稲盛氏は、それを聞いて”何も知らないじいさん、それも田舎大学を出た無知な技術屋が突然来て、むちゃなことを言っている”という具合に受け取れたそうです。
並み居る幹部連中は皆、利発そうで、明らかに面従腹背(めんじゅうふくはい)という様子だったそうです。

稲盛氏は、「そんなのは経営なんかではありません」と、きつく叱ったそうです。
「私はパイロットの経験はないけれど、飛行機のコックピットには計器がいっぱいあって、その計器を全部見なければ安全に飛べないはずだろう」と、当たり前の経営原則や視点が、当時の、JALの幹部には欠けており、それが破綻に大きな要因であると感じます。

そこから、稲盛氏の幹部育成が始まります。

JALの幹部陣役50人を集めた「リーダー教育」。
1か月に17回以上のミーティングの中で、稲盛氏の経営哲学「フィロソフィー」に関する講話やディスカッション、その後は、 一人ずつ数千円の会費を自腹で払って 「コンパ」という勉強会&懇親会が遅くまで催されていたそうです。

そんな中でも、当初は、「そんな子供じみた道徳の話をいまさら言われなくても…」と明らかに不遜な態度で参加する幹部もいたそうですが、そのたびごとに、稲盛氏は…

「そんな子供じみた道徳みたいなことすらもできていない!!」と、また、叱りつけたそうです。

人生・仕事の成果=考え方×熱意×能力

何度目かの「リーダー教育」の際に、ある一人の幹部がおもむろに手を挙げて発言します。

「私が間違っていたと思います。
 私のしてきたことは間違いであった。もっと早くに稲盛さんの教えを学んでいたら、
 JALは破綻することはなかった。そう思います。」

稲盛氏は、日中も足しげく、JALの現場に赴きます。
”自分たちは破綻した会社の社員だ”と俯き、仕事をするのではなく、

「一緒に再建に取り組みましょう。
 お客様が、次もまたJALの飛行機に乗りたいと思ってもらえるような仕事しましょう」

と社員を鼓舞して回ります。

再生計画からわずか1年後には、計画のおよそ3倍、1884億円と過去最高益を記録、翌年2012年の秋には再上場を果たします。

稲盛氏は、こうして見事にJAL再建というミッションを果たします。
再建の最中で、彼が説いた考え方教育=「フィロソフィー」は、「JALフィロソフィー」と進化し、今も尚、JALの経営理念の中心、JALの新しい翼として輝いています。

経営において何が一番大切なのか、極めてプリミティブなことが、この物語からは学ぶことができます。 この一連のストーリーを、動画にしてみました。

本ブログでは、働く人の心が豊かになるような、経営にまつわる様々な感動ストーリーをご紹介しています。会社づくりや組織づくりのヒントになれば幸いです。

尚、今回の感動事例は、拙書
「会社を潰さないためのSunday Management List -中小企業のリーダーがやるべき日曜日のマネジメントリスト」https://www.amazon.co.jp/dp/4867280283/でも引用しています。
詳しくはこちらをhttps://sun-light-consulting.com/publishing