イーライリリーのミラクルの物語

感動経営 | Emotional Management

ギャラップ社のエンゲージメント調査

世論調査会社として名高い米ギャラップ社が2017年に発表した

従業員エンゲージメント調査結果(State of the Global Workplace:Gallup 2017)では、「熱意あふれる社員(Engaged)」は世界平均で15%という事でした。そして、日本は調査対象となった139か国中132位、わずか6%、自分の仕事に「熱意や意欲を持てない(Not Engaged)」人は71%という結果で、世界最低水準という評価でした。

人生100年時代となり、人生の多くを会社や仕事で費やす現代の我々にとっては、「働く」ことと、「生きる」ことはもはや同義といっても差し支えないでしょう。

だからこそ、自分の仕事に対する愛着や誇りを持つべきでしょう。そのためには仕事を通じて、何を実現するか?どう貢献するか?という目標、ビジョンが必要ではないでしょうか。

イーライリリーのミラクルの物語

イーライリリーという会社はご存知でしょうか?医療従事者であれば、おそらく知らない人はいないと思われる世界的な製薬会社です。この特徴的な社名は、実は創業者の名前を冠しています。

イーライリリー氏は、化学者であり薬剤師でもありながら南北戦争にも従軍した将校さんでした。イーライリリー大佐は、戦争終結後、故郷であるインディアナ州で薬局を開業しました。当時は、現代ほど臨床試験などの制度がアメリカ全土に浸透しておらず、ドラッグとも区別できない粗悪な薬品なども売買されていたようです。

ある時、イーライリリーの薬局に、一人の少女が訪れます。その少女は、手に握りしめたいくばくかの硬貨をイーライリリー氏に差しだし、消え入りそうな声でこう言ったそうです。

「ミラクルちょうだい…」

 何の事かわからずにイーライリリー氏はその子に、
 「どんな薬がほしいの?」と行くのですが、彼女は、半べそをかきながら、
 「ミラクルちょうだい…」とだけ繰り返すのです。

困ったイーライリリー氏は、家の人におつかいの内容を聞こうと、その子の家までついていったそうです。玄関の呼び鈴をならすと、その少女の父親らしき人が出てきました。イーライリリー氏は、父親に説明しました。顛末を聞いた少女の父親は悲しげな表情で、イーライリリー氏に事情を話しました。

 「実は、あの子の母親が不治の病で床に臥せっています…。 
  かかりつけの医師に往診にきてもらっているのですが、回復の見込みはなく、
  意識がもうろうしている妻の枕元で、私が医師に聞くのです…。
  “先生、妻は直らないでしょうか…?”
  “ミラクル(奇跡)でもない限りは…”
  あの子はそのやり取りをこっそりドアの向こうで聴いていたのでしょう…」

その話を聞いて、イーライリリー氏は、自分の商売が本当の意味で人々の役に立てるものではないと恥じ入ったそうです。彼は、世の中から、病気で苦しむ人とそれを涙ながらに看取る人を少しでも減らそう、そのための医薬品を作ろう、と心に決めました。病気に苦しむ人を少しでも減らし、彼女のような小さな子が母親と幸せに暮らしつづけることのできる世の中を想像したのです。


それから、約半世紀の時を経て、イーライリリー社は世界で初めて、インスリン製剤の開発と大量生産を成功させます。イーライリリー氏が、一人の少女との出会いにより描いたビジョンが結実し、いまや医療の世界では欠かすことのできない薬剤を開発し、人々の生活に寄り添っています。


誰の為に、何の役に立つか、どう貢献するかをイメージする事が企業の成長と競争力になった好事例と言えます。イーライリリー社は世界中の支社で新たに迎えるすべての社員に、この“ミラクルの物語”を話して聞かせているそうです

本ブログでは、働く人の心が豊かになるような、経営にまつわる様々な感動ストーリーをご紹介しています。会社づくりや組織づくりのヒントになれば幸いです。

尚、今回の感動事例は、拙書
「会社を潰さないためのSunday Management List -中小企業のリーダーがやるべき日曜日のマネジメントリスト」https://www.amazon.co.jp/dp/4867280283/でも引用しています。
詳しくはこちらをhttps://sun-light-consulting.com/publishing