あなたのチームのセンターピンは?

感動経営 | Emotional Management

センターピンに向かって投げているか?

最近になって、ボーリングをプレイしたのはいつのことですか?
ボーリングでストライクを狙おうとするとき、どこを狙って投げますか?
ストライクを取るには、必ず倒さないといけないピンがあります。
それが、10本のピンの先頭に立つ「センターピン」です。
センターピンを倒さない限りストライクを取る事はできませんから、
ボーリングをプレイするすべての人が、その「センターピン」をめがけて投げるはずですよね。
(多少角度をつけながらも)

組織やチームを率いる上でも、絶対に外してはならない「センターピン」があるということを、
ある企業事例から学ぶ事ができます。

リッツカールトン・ホテルはご存じでしょうか?
「ホスピタリティ(おもてなし)世界No.1」と称される有名なホテルです。

以前、リッツカールトン日本支社の支社長を務めていらっしゃった
高野登さんの講演を聞いた際に、この「センターピン」の重要性を教わりました。

従業員一人に2,000ドルの決裁権限を持たせる

リッツカールトンでは、ホテルで働くすべてのスタッフ(清掃担当に至るまで)に、
2,000ドル(1ドル100円レートなら約20万円)の決裁権が与えられているそうです。

「一般のスタッフに20万円も好きに遣わせて経営は成り立つのか?」

という疑問に対して、高野さんは次のエピソードを引用して答えてくださいました。

 ある大学の教授が、講演旅行でリッツカールトン大阪を利用されました。
 チェックアウトを済ませて、新幹線に乗ってから、夕方東京の講演で使用する資料を
 部屋に置き忘れてしまったことに気付いたそうです。
 教授は慌ててホテルに電話をして、事情を話したところ、電話に出たスタッフが、

 「それでは今すぐに新幹線に乗って追いかけます。
  東京駅でお渡しさせて頂いてよろしいですか?」
 
 と応えたそうです。
 教授は驚いたのですが、断る理由はなく、東京駅でそのスタッフを待ちます。
 ほどなく東京駅に到着したスタッフは、資料を手渡しそのまま大阪にトンボ帰りです。
 結果、教授は無事に講演を実施することができたのですが、
 このことに深く感銘を受けた教授は、その講演で、教授は、このリッツカールトンの
 スタッフの行動を、さんざん褒めちぎったそうです…

東京~大阪間の新幹線往復運賃は約3万円と少し。そして時間にすれば往復3時間と少し。

わずか3万円、3時間の投資で、リッツカールトンは素晴らしい評判と、
毎回利用してくれるヘビーユーザーを手に入れることができたと、考えるそうです。

“クオリティーを上げればコストは下がる”

実際に、リッツカールトンは広告宣伝費をほとんど使わないそうです。
多額の決裁権限を与えると同時に、

”目の前のお客様に最高のおもてなしを施す”

という「センターピン」が従業員に浸透していることの証明ではないでしょうか。

 ”何を一番大切にするか”=”私たちの狙うセンターピンは何か”

このことがリッツで働くすべての人たちに周知徹底されているからこそ、
ホテルのクオリティを維持し多くの顧客の心をつかんでいるのだと納得しました。

リッツを超える名もなき小さなホテル

高野さんが、そんなリッツのホスピタリティを凌駕すると、感じたお話をしてくださいました。

東北のとある小さなホテルであったお話だそうです。
そのホテルのに親子三代(祖父母・父母・子供たち)の家族連れのお客様が
お見えになったそうです。ちょうど夏休みの時期で、家族旅行でご利用になったのでしょう。

ご家族はチェックイン手続きの間に、ホテルロビーのカフェスペースに腰掛けました。
ほどなくホテルの従業員でウェイトレスさんが注文を取りにやってきました。

ところが、そのウェイトレスさんはある事態に遭遇します。

少し具合の悪そうなおじいちゃんに目をやると、その足元からじわーと広がるものが…
どうやら失禁してしまっていたそうです。

もし、あなたがウェイトレスさんならどのように対応されますか?

彼女は、とっさに手にもっていたコップの水を、おじいちゃんの足元にこぼして、
謝罪の言葉を繰り返した後に、ご家族の方とおじいちゃんをホテルの浴室にご案内したのです。

その時の彼女の行動を引き起こしたものは何か?
高野さんは、この行動原理には、この小さな名もなきホテルの中で共有されている
”センターピン”があると仰いました。

そのウェイトレスさんがその時見たセンターピンは何か…?

 ”お客様に恥をかかせないこと”

名もなき小さなホテルであっても、そこを利用されるお客様には思い出の1ページ。
そのウェイトレスさんは、そのご家族の思い出に苦い記憶を残してはならない、
とっさにそう思い、あのような行動にでたのです。

高野さんは、このお話をこう締めくくってくださいました。

 ここには、良いリーダーがいる、
 そして、良いフォロワーもいる。

普段から自分たちの仕事の意味や意義を話し合っている職場でなければ、
なかなかこういった行動をとることは難しいですよね。

あなたのチームの”センターピン”は何ですか?